歌音協は、歌舞伎公演に常時携わる長唄(唄、三味線、囃子)、並びに竹本(太夫、三味線)の演奏者の団体です。
歌音協では、演奏者の相互研鑽、親睦を図るとともに、歌舞伎音楽演奏家としての権利の拡充や活動条件の改善を行い、これらを通して歌舞伎音楽芸術の発展に寄与するために、次のようなさまざまな活動を行っています。
- 歌舞伎音楽及び技芸の向上発展のための調査研究
- 会員の著作隣接権の処理に関する業務
- 関係文化団体との協議、提携
- 各種研修会、懇親会の開催
- 機関紙及び図書の刊行
- その他目的達成のため必要な事業
歌音協会員の演奏する歌舞伎音楽には、次のような特色があります。
- 歌舞伎音楽がなければ、歌舞伎劇は成り立ちません。
- 歌舞伎音楽の音楽効果は、劇の盛り上がりに大きな影響を及ぼします。
- 歌舞伎音楽は俳優の演技を助け、時にはリードすることもあります。
- 芝居についた演奏は歌舞伎音楽専従者以外の演奏者には簡単にできないものであり、黒御簾音楽・竹本に共通した重要な特色です。
歌舞伎音楽の専従者でなければ難しい、「芝居についた演奏」とはどのようなものなのでしょうか。
- 一般の長唄の演奏は、立唄・立三味線の構想のもとに演奏されます。しかし歌舞伎長唄においては、そこに俳優の構想が付け加えられます。「演技の構想を演奏の構想に巧みに取り入れ、舞台において具現する」という作業は、歌舞伎長唄の演奏者として重要な任務となっています。
- 歌舞伎劇において、黒御簾音楽は独自の曲や技法を編み出してきました。大太鼓の効果音としての用法、三味線の合方のいけころしなどは、その代表的なものです。これらも俳優の演技の構想を巧みに取り入れ、演奏で具現した産物といえるでしょう。
- 義太夫節においても、歌舞伎劇が文楽から演目を取り入れてから、歌舞伎劇用の義太夫節が独自の進化をしてきました。これも演技の構想を演奏に取り入れた結果です。
- 演技の構想を演奏に取り入れるという作業は、俳優と演奏者という人間対人間の間で行われます。その作業を円滑に進めるには、やはり意思の疎通が良好な人間関係が求められます。統率力のある俳優は、必ず自身の専従演奏者をもっていました。これは、現在でも意識として続いています。
以上のように、演技の構想を取り入れた演奏が歌舞伎音楽の特色といえ、またそれは、演技者と専従演奏者との信頼関係の上に築かれています。
単なる演奏にとどまらず、永年にわたり俳優と共に築き上げて来た歌舞伎音楽の伝承、そしてその実演家としての演奏技術は、歌舞伎音楽専従者以外には一朝一夕に会得できるものではなく、歌舞伎公演において重要な位置を占め、私たち歌音協会員の誇りとなるものです。